藤吉 vs エランス
カルテットに参加している吉田達也とのデュオであることは既にディスコグラフィーで書いたが、気になるこのデュオについて、もう少し掘り下げて書きたいと思う。
始まりは多分、カルテットから飛び出したと言うか、延長線上にあったのでは無いかと推測する。録音時期もミネルヴァに近いし、ツアーの中から生まれたユニットで、「ちょっとやってみようか」というような軽いものではなかったろうか。
1枚目の「藤吉」を聴くと、吉田達也に対向するような藤井郷子のヴォイスが珍しい。ピアノはカルテットで見られた全体を繋ぎあわせるような弾き方では無く、こちらも真っ向から立ち向かうようなピアノと言った風で、そういう独自の路線のようでありながらも、結果、聞こえて来る演奏は、どちらかと言えばカルテットの雰囲気に近い。藤井郷子の曲を2人でやっている。という感じだ。
聴いたときの影響が強かったのか、私はこのデュオを自分の中で藤吉というユニットとして認識してしまった。たまたま一緒にやった記録としてのタイトル「藤吉」では無く、これからも活動を続けて行くであろうバンド名として記憶したのである。
それから1年と2ヶ月位経ち、再び2人で録音されたのが「エランス」ということになるのだが、こちらは、それぞれ別々のツアーのためアメリカに渡った際に落ち合って録音されたもので、録音に持ち込んだ、それぞれの雰囲気が違う事を匂わせる作りになっている。
カルテットの影響は影を潜め、曲の提供も丁度半々くらい。曲を作った方が自然とリーダーシップを取っているのか、聴いていて、藤吉になったり吉藤(あるいはルインズとも言う^^;)になったりする様は、なかなかに楽しい。共同で作曲された曲などは、曲中でも変化を見せる。
つまり、何が言いたいかというと、「藤吉」の時は一緒に演奏を重ねている流れの中から作られたのに対し、「エランス」は録音の為に全然違う方向の流れを一緒にして作ったという、録音までの2人の関わり方が出ているのではないか。と思うわけだ。
この辺りは、デュオの演奏が、作り込んだ譜面を元にするよりも、即興が主である(というか、即興で演奏して、後からタイトルを付けたようにも思えるが)影響かもしれない。録音に臨む姿勢というか気分というか、ちょっとした違いが演奏の雰囲気に与える影響は大きいのであろう。
さてさて、更に次のCDが楽しみなデュオなわけだが、ライブも聴いてみたい。
名古屋まで来るか、せめて土日にやってもらえれば東京まで行くのだが...
(2004/05/11)
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