2005/11/08(火) 今年一番

8:10起床。曇。風呂と食事の後、カンティヨンに向かうと、マッシングは既にに始まっており、ウォートの抽出に入っていた。
すごい蒸気の中、麦の香りが漂う。ジョン(皆がそう呼んでたから多分間違いない)が私を見て「飲むか?」とウォートをグラスに注いでくれる。飲んでみると結構甘く、何だか麦からビールが出来る事に関して、改めて納得。
抽出されたウォートは、そのままポンプによって2階のホップボイラーへ。ある程度溜まってくるとホップを投入するのだが、この行程では、徐々に泡が盛り上がるように沸騰していく様に思わず感動してしまう。沸騰してくるとホップのせいで一気に香りが変わって柑橘系のフルーティさが混ざり、嗅いだ覚えのあるランビックの香りに少し近づいてきた。
ウォートの抽出が終わった後には大量の搾りカス。中に立つと膝の上辺りまであるが、ジョンとパトリック(自己紹介してくれたから間違いない)の2人がスコップで掘っていく様子は雪おろしを思いだして、なんだか笑えてきてしまう。
さて、ホップボイラーで2,3時間は煮詰めるため、冷却に入るまでには少し時間がある。一旦ミディ駅まで戻って一服してからカンティヨンに戻ったが、まだ掃除が続いていてパトリックが鼻歌を歌いながら槽の下部、8つほどに分かれるフィルターを外し、かき集めたカスをすくっては流水で洗うのを繰り返していた。綺麗にするのはなかなか大変である。
さて、いよいよ冷却。
煮詰まったウォートをフィルターでホップと分離しつつ、ポンプで屋根裏の冷却槽に上げていくのだが、最初のウォートが冷却槽に出て来る様は、もう感動以外の何ものでもない。
ゆっくりと槽の中に広がっていくウォート。冷えた銅板が温まり、バシッ、バシッと音をたてる。
ジョンが上がって来ると私の横に並び、静かな声で「ファースト・ワン」だと言い放つ。満足げに様子を眺めるその姿には、ビールの造り手としての自負と喜びを感じずにはいられない。
順番にパトリックも上がって来て確認していたが、やはりこの瞬間は興奮するのか「出て来るとこを見たか?」「いい眺めだろ」てな問いかけを連発するので、「ベリーナイス」だの「ビューティフル」だのを私も連発して応える。
やがてウォートが満ちてくると大量の湯気が私までおおいつくして前が見えないくらいになったが、同時に香りにも包まれる。麦の香りに包まれる感覚がこれほど心地良いものだとは思ってなかったので、風向きにより自分に向かってきたり遠ざかって行ったりする湯気と香りを、時間を忘れて一人楽しむ。
しばらくすると表面が泡で覆われて湯気も少なくなり、再度ウォートの出ている所が見えるようになってきたが、そうなると今度は、何処か秘境の温泉地に居るような気分になってきた。
途中で一旦、冷却槽の栓を抜いて一部をステンレスタンクへ移す。今作っている量では溢れてしまうそうだが、それでも時間と共に泡が冷却槽の縁まで達すると、一人で見ていた私は心配になってしまい、降りて行ってジョンに満杯であることを伝えた。
しかし、見に来たジョンは「これで普通だ。もうすぐ終わる」というようなことを言うではないか。まぁ、確かに止まったのだが、ポンポンと肩を叩いて「知らせてくれてありがとな」てな感じの言われ方をされると、ひょっとして子供扱いされてるんではなかろうかと思ってしまう。多分私の方が年上なんだけど...
すべてのウォートが冷却槽に入ったのを確認して下に降りると、既にホップボイラーの掃除が始まっており、梯子をかけて完全に中に入っていた。またしても鼻歌を歌いながら掃除しているパトリック。結構働きもんである。
時計を見ると閉店時間は過ぎており、最後まで見学させてくれたことに感謝しつつ、カンティヨンを後にすると、スーパーで買い物をして部屋に戻り夕食。
ひと休みしたあと、今夜はブリュッセルでrovaのライブが行なわれるとの情報をキャッチしていた私は、pp cafe へと向かう。
店内のポスターには21:00スタートと書いてあったが、実際に演奏が始まったのは45分頃。チャージが9ユーロとお値打ちだったし、演奏も大変良かったのだが、終了した時は既に24:00頃で店を出た時にはバスもトラムも最終が出てしまっており、結局タクシーを使って帰る(後で調べたら、結構宿の近くを通る路線がまだ動いていた)。
部屋に戻るとそのまま就寝。

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